私的在宅勤務録(イエローページ vol.4〔2020/06/25〕)

本や雑誌を作る仕事をしている。編集職ではなく、文字通り物体としての本を作る部署。これといって不満はないが、今年になってなんとなく新しいことをはじめたいと思っていた。「イエロページに参加させてもらったのもその一環だったんだけど、ルーチンに落ち着きがちな日々の仕事においてもなにか新しいことをしてみたい。年齢を重ね、与えられたポジションに満足しているかと問われたら、100%肯定できなかったのかもしれない。
だから「本のカバーデザインをやってみない? あと帯も」とこれまでにやったことのない仕事への参加を打診されたとき、ふたつ返事で引き受けたのだろう。作業自体は想像したとおりとても刺激的。関連部署の同僚ふたりをさまざまな局面で質問攻めにして迷惑をかけどおしだったが、そのおかげで最後まで気を張った状態で駆け抜けられた。

もちろんただ平坦な道のりだったわけではない。最大の障壁はこの情勢下において、職場でもはじまっていたリモートワークだった(そもそもこの仕事を引き受けたとき、新型コロナウイルスの流行はまだ本格的ではなかった)。自宅にはもちろんPCがあるが、壊れたさいに復旧を後回しにしていたため、職場から貸与されたノートPCでの作業を余儀なくされていた(つまり自業自得)。速度面でも、(ノートPCなので仕方がないが)モニタサイズの小ささでも悩まされた。自宅にあった32インチのモニタにノートPCを接続してからは大幅にストレスが軽減されることになるのだが、これまでどおり職場で業務にあたっていればもう少しスムーズだったかもしれない。
担当編集者のアイディアのいくつかにはまったく思いもよらないようなものがあり、そしてそれが全体をさらに良い方向に導いてくれた。もちろん自分でもいくつかアイディアを提出し、いくつかは取り入れられ、いくつかは検討の末見送られた。
こうして、はじめてのカバーデザインは少しずつ形になっていく。ラフを作り、デザイン案が固まり、入稿して校正紙が出力される。どの段階においてもワクワクした。見本が職場に届いた日の高揚感はいまでも忘れがたい。ツイッターなどで検索するに、さいわいにもある程度受け入れられているようで、正直ホッとしている。
新型コロナウイルスの流行にともなう自粛期間をどのように過ごしていたか。いまそういう話題になることが多いが、自分にとって、その答えはこういうことだった。
 
 

Jazzie
ほかにもいろいろな仕事をしている。データとしての本を作る仕事も。

 

その後、このタイトルは著者のひさしぶりの重版作品となり(著者が自らツイートしていたから当たらずとも遠からずだろう)、ある著名装幀家が新聞で持っている連載で取り上げていただくという僥倖にも恵まれた。少しは自信に思ってもいいのかもしれない。